≫ No.3

11 : 第十一話



それから四人は歩き出し、その途中で洋輔は何かに気づいた様子でセノトを見上げた。
「学校に行くってなったの三日くらい前のあの時だよね。どうしたの?」
数日前に守護神たちが家に帰ってから、四人のファイネルはどこかへ集まっていたのを洋輔は知っている。もちろん浩輔もだ。
しかし内容までは知らなかったので、まさか学校に行く段取りをしていたとは驚きだ。
そして彼の質問の意図がどういう手段で手続き等を済ませたのか、ということを正確に読み取ったセノトは短く答えた。
「長が手を回してくれた」
あとのことはわからないが、彼らの世界を仕切るあの老人でなら信頼できる。
さて、どういう手を使ったのだろうか。まぁ、別段知りたいとも思わないが。
「ふうん。でもびっくりだね。浩輔も迂闊なことできないし」
「それはお前だろっ。洋輔さえ余計なことしなかったら俺は平穏な生活が送れるんだ」
いかにも浩輔が問題を起こしているような言い分にさしもの本人も腑に落ちない。
浩輔はじとっと片割れを睨みつけるが、彼にはあまり効果はなかった。
そうこうしているうちに四人は学校に到着し、門をくぐった。
「ねぇ、しょくいんしつってゆうところに行ってってゆわれてるんだけど、どこにあるの?」
校舎内に入り、靴を履き替えてからフィアナは双子を振り返った。セノトも中の構造はわからないので、どこに何があるのかも知らない。
「あー、そっか。じゃあ一緒に行こ」
口で言ってもおそらく辿り着けないだろう。
ホームルームまで少し時間があるので、案内したところで遅刻にはならないだろう。
浩輔は二人を誘って職員室がある方へと歩いていき、その三人のあとを洋輔は付いていった。
職員室は特別棟の一階にあり、下足室前の廊下から一直線に繋がっている。その廊下を歩いていると、前方に見知った人物が四人、職員室の前で立ち止まっているのを見つける。
「あ、弘人くんたちだ」
「ん?おう、お前らも来たか」
洋輔の声に気づいた四人はこちらを振り返り、その中でも藤は片手を挙げてみせる。
「フィア、おはよ」
「わ、おはよう。ユア」
突然抱き付かれたフィアナは驚いた声を出すが、すぐににこりと笑うと挨拶を返す。
そんな鬱陶しいやり取りを見ない振りで視線を逸らせていた浩輔は肩を落とすと、一番まともなセノトに視線を移す。それに気づいた彼は少年を見返し、微かに首を傾げる。
「そこが職員室だから、あとは大丈夫だよな?」
「ああ。わざわざ悪かったな」
頷いてみせるセノトに苦笑を浮かべて、浩輔は首を横に振る。
あそこで見捨てて行けば、問題が起こることは確実だ。なら、少し面倒だが自分の監視下にあるほうが安心はできる。
「じゃあ、俺たちは教室に行くから」
「お。俺らも行くー」
双子だけでさっさと教室に行こうとしていることに気づいた藤も、島崎を誘って一緒に行こうとする。その前にクロカたちを振り返った。
「クロカちゃん、また後で」
「ええ、ありがと」
手を振る藤に苦笑を浮かべたクロカは手を振り返し、それを見届けた藤は満足そうに踵を返す。他の守護神たちも同様に背を向けた。
そしてクロカを先頭に職員室の扉を開けた。



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